出雲商業高校で、生成AIとレーザーカッターを組み合わせたDX体験授業を行いました。
この授業では、生徒たちが生成AIとの対話を通してアイデアを深掘りし、最後はレーザーカッターを使ってオリジナルのコースターを制作します。
実はこの授業、今年3月にも一度実施しています。
前回の授業の様子については、以前の記事で紹介しました。
今回は同じ授業をもう一度行うにあたって、前回の経験から改めて感じたことを書いてみたいと思います。
「なんとなくいい」で完成してしまう
生成AIを使い始めたばかりの生徒を見ていると、少し気になることが…。
AIに対して、
「こんな感じのものを作って」
と曖昧な指示を出しても、生成AIはそれなりに見栄えのするものを作ってくれます。
すると、
「お、いいじゃん」
となって、そのまま完成してしまう。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、よく見てみると、
- これは誰に向けたものなんだろう?
- 何を伝えたいんだろう?
- なぜ、このデザインにしたんだろう?
という部分が、あまり考えられていないことがあります。
つまり、「きれいにできた」と「良いものができた」は、必ずしも同じではないということです。

これは高校生に限った話ではありません。
最近では、イベントのチラシや店舗のPOP、SNSの投稿などでも、「見た目はきれいだけど、結局何を伝えたいのか分からない」というものを目にすることがあります。
生成AIによって「それっぽいもの」を作ることが、以前よりずっと簡単になったからこそ、こうしたことが起きやすくなっているのかもしれません。
では、どうすればオリジナリティが出るのか?
今回の授業では、いきなり「コースターのデザインを作って」とAIにお願いするわけではありません。
まず、
- 誰に使ってもらいたいのか?
- 何のために作るのか?
- どんな人に喜んでもらいたいのか?
といったことを考えていきます。
例えば、出雲の高校生がコースターを作るのであれば、
- 出雲を訪れた観光客のお土産
- 地元の人が使いたくなるもの
- 卒業の記念になるもの
- 家族にプレゼントしたくなるもの
- 学校の思い出を残すもの
など、いろいろな方向が考えられます。
そして、そこから生成AIに質問をしてもらいます。
- 生徒が答える
- AIがさらに質問する
- また生徒が答える
そうやって、自分が何を作りたいのかを少しずつ具体的にしていきます。
つまり、AIに答えを出してもらうのではなく、AIとの対話を使って、自分の考えを深掘りしていくわけです。

「出雲らしいもの」だけでは、出雲らしくならない?
ここで、もう一つ感じたことがあります。
例えばAIに、
「出雲らしいコースターのデザインを考えて」
とお願いしたら、出雲大社やしめ縄、勾玉など、出雲に関連するものをいろいろと提案してくれるでしょう。
もちろん、それらは出雲を表す大切な要素です。
でも、それだけで本当に「自分だけの作品」になるでしょうか。
おそらく、なかなか難しいです。
なぜなら、それらはインターネット上にもたくさんある、誰でも知ることのできる情報だからです。
一方で、
「子どもの頃、家族と毎年ここに行っていた」
「学校帰りに見ていた、あの風景が好きだった」
「地元の人には当たり前だけど、県外の人には珍しいと思う」
「自分にとって、この場所にはこんな思い出がある」
といった情報はどうでしょう。
これは、AIがインターネットから簡単に拾ってくることのできない情報です。
そして、そういう自分自身の経験や記憶こそが、作品のオリジナリティにつながるのではないかと思っています。
AIを使うほど「自分」が重要になる
生成AIは、大量の情報を組み合わせて、アイデアを出したり、文章を書いたり、デザインを考えたりすることができます。
だからこそ、AIに一般的な情報だけを渡せば、一般的なものが返ってきやすい。
そこで重要になるのが、自分自身の経験です。
- 自分が見たもの。
- 自分が感じたこと。
- 自分が経験したこと。
- 自分だけが持っている記憶。
こうしたものをAIとの対話に持ち込むことで、AIだけでは生まれにくいアイデアになっていく。
少し逆説的ですが、AIを使う時代になったからこそ、「自分にしかないもの」が以前より重要になっているのかもしれません。
最初と最後は人間。その間をAIに手伝ってもらう
生成AIを使うときには、
最初と最後は人間。間の部分をAIに手伝ってもらう。
くらいが、今の高校生には分かりやすいのではないかな。
最初に、
「自分は何を作りたいのか」
を考える。
その途中でAIに、
「もっと深掘りするための質問をして」
「自分の考えを整理して」
「別の視点を出して」
と手伝ってもらう。
そして最後に、
「本当に自分が作りたかったものになっているか」
を人間が確認する。
AIに丸ごと任せるのではなく、自分の考えを形にするためにAIを使う。
今回の授業でも、そんな使い方を意識しています。
「AIに作ってもらう」から「AIと一緒に作る」へ
生成AIによって、アイデアを形にするハードルは確実に下がっています。
一方で、「作れること」と「良いものを考えられること」は、やはり別のものだと感じます。
だからこそ、これからの人材育成では、AIの操作方法を教えるだけではなく、
- 自分は何をしたいのか
- 誰に届けたいのか
- なぜ、それを作るのか
を考える力も大切にしていきたいと思っています。
今回のような授業では、生成AIだけでなく、レーザーカッターなどのデジタル技術も組み合わせることで、「考えたことを実際の形にする」ところまで体験できます。
三島笑会では、こうした生成AIやデジタル技術を活用した人材育成・教育の取り組みを通して、地域の中で「自分で考え、デジタルを使って形にできる人」を増やしていきたいと考えています。
AIに任せることが増える時代だからこそ、最後に大切になるのは、案外「自分はどうしたいのか」というところなのかもしれません。
今回の授業も、生徒たちがAIに答えを出してもらうのではなく、AIを使いながら自分の考えを深め、それを自分の作品として形にする。そんな経験になればと思っています。

